とても気分の良い映画だった!とにかく楽しい。たくさん笑ってちょっぴり泣ける、最高のエンターテイメントである。この映画のサントラ“Awesome Mix Vol.1”は、映画館を出て直ぐにポチってしまった。全米でもNo.1ヒットを飛ばしており、新曲がないアルバムとしては、初の事。『アナと雪の女王』のサントラもNo.1になったのは記憶に新しいが、ディズニーのサントラがここまで売れたのも初めての事。飛ぶ鳥を落とす勢いのディズニー。これからも良作を期待しますよ。
70年代ヒッツの音楽は懐かしさだけでなく、こだわりの選曲となっており、場面の意味も歌詞とリンクした作りになっている。そのこだわりは、ジェームズ・ガン監督が全て曲を指定して脚本家にリライトさせているほどだ。
そんなこの映画のサントラは、劇中に出てくるカセットそのままなジャケットで、劇中に登場する全ての70年代ヒット曲だけが一曲の過不足なく収められている。全12曲45分は、LPレコードでは一般的で、46分テープに入れるのに丁度良い長さとなっているのも、カセット世代にはたまらない仕様だ。実際に入れるには曲順入れ替えが必要だけど、登場順に入れれば、ピッタリA面とB面に収まる事が判明!カセットへダビングする際に、是非とも活用して頂きたい。え?やらない?
では、登場順に曲の解説をしてみたいと思う。昔のレコードのライナーノーツを引っ張り出したりして、オイラの知らない事はいろいろ調べて書いてみたんで、映画鑑賞の補足にして頂きたい。
サントラ買った人は、聴きながら読んでみよう!
6.I'm Not in Love (1975)
10cc
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は、この曲から始まる。一人の少年が病室の前で独り、ウォークマンを抱えて座っている。
10ccはイングランド出身の4人組のバンド。1975年に発表のされた、架空の映画をイメージしたコンセプトアルバムに収録されている。
幻想的なコーラスがとても印象的な曲で「恋なんかしてないよ。愛してるわけじゃないよ。」と、素直になれない恋心を表現した名曲だ。
死を間近に控えた母親からの愛に対し、素直になれない少年の心とリンクし、いきなり涙腺が緩む。
シンセサイザーがない時代にシンセコーラスの音を気の遠くなるようなアナログ編集を繰り返して作った、歴史的名曲。メンバー3人のコーラスを16回ずつ重ね取りしたものを、13音階分作り、アナログマルチテープに入れ、ミキサーの各チャンネルに立ち上げ、ミュートボタンやフェーダー操作によって、まるでシンセサイザーのように演奏したという。その模様を、奇特にも完全再現した吉祥寺の音楽バカたち(?誉めてます!)による狂気の動画を見つけたので是非、ご覧頂きたい。
10cc - I'm Not In Love 完全再現レコーディング | Magical Mystery Sound Tour
8.Come and Get Your Love (1974)
Redbone
地球(テラ)から去って26年後。ピーターが惑星モルグで「お宝」を探しつつ、棲息する小動物を蹴飛ばしながら踊るファンキーなシーンで流れる。軽快でファンクなこの曲はBBクィーンズ「踊るポンポコリン」の元ネタとしても有名。「こっちに来て、僕の愛を受け取ってよ」と、女性をベッドへ誘う、軟派な曲だ。素直になれなかった少年が、立派なチャラい男に成長した姿を見事に表している。
レッドボーンは、ネイティブ・アメリカンのロックバンドで、ネイティブ・アメリカンのチャントやリズムをロックに取り入れた異色のバンドだ。抜群の技術とその声は勿論だが、ジャズやフォークもこなし、70年代に人気を博した。この曲は1974年発表のに収められている。
2.Go All the Way (1972)
Raspberries
オーブを手にしたスターロードが追っ手を振り切り、惑星モルグから飛び立つシーンで流れる。
エリック・カルメン率いるラズベリーズが、1972年発表アルバムからの名曲。積極的な彼女にリードされ、戸惑いながらも自分に自信が持てるようになる男の子の心を歌っている。俺は彼女に「お願い。私を満たして。あなたといると気持ちいいの。愛してるわ。抱きしめて」って言われて、僕は生まれ変われたんだ!って内容の歌。つまり脱童貞の歌ですねw
ピーターが26年間、どう成長してきたのかを、端的に説明している曲である。
また、エリック・カルメンは、作曲活動もしており、件の映画『フットルース』の愛のテーマ“Almost Paradise”を書き下ろしている。
ちなみにこんな曲。
Almost Paradise - Mike Reno & Ann Wilson
1.Hooked on a Feeling (1973)
Blue Swede
キルン刑務所の看守が、取り上げたウォークマンで聴いているのがこの曲。逆上したビーターが、奪い返そうとするが、返り討ちされて殴られる辺りで「最高の気分さ〜」と、歌詞がカブるのがたまらない。
スウェーデン出身のブルー・スウェードが1973年に発表した“On My Way”に収録されたヒット曲。
「ウガチャカ・ウガ・ウガ」の原始人みたいなコーラスから始まるこの曲は1968年にB.J.トーマスが発表した“Hooked on a Feeling”のカバー曲である。恋に落ちた男の気持ちを歌った歌を、ミスマッチな野生的なコーラスで、コミカルにアレンジしている。
クエンティン・タランティーノ監督『レザボアドッグス』で使用され90年代にもリバイバルヒットした。
ちなみにらこちらはB.J.トーマスの原曲。
B. J. Thomas: Hooked on a Feeling (James, 1968)
10.Escape(The Pina Colada Song) (1979)
Rupert Holmes
キルン刑務所から脱獄する時に流れるこの曲は、1979年のルーパート・ホルムズの歌。恋人と倦怠期になった男が、浮気をしようとする歌だ。ある日、新聞の個人広告で見つけた(今だと出会い系サイトかな)ピニャコラーダが好きだと言う、自分の探し求めていた女性を見つけた。「(日常から)エスケープしませんか」彼女に返事を書き、バーで会うことにしたら、やって来たのは自分の恋人だった、というオチ。二人はお互いの好みも知らなかったんだと改めて思い知り、お互いの愛を深めたというお話。
曲は、日常のエスケープを歌ったイージーな曲だが、刑務所からのエスケープで流すセンスが笑える。
最近ではベン・ステイラーの『LIFE!』でジャック・ジョンソンのカバー曲が流れていた。
Jack Johnson - Escape (The Pina Colada song)
4.Moonage Daydream(1972)
David Bowie
1972年発表のデヴィッド・ボウイの名盤に収録。
デヴィッド自ら、ジギー・スターダストという架空のロックスターを演じるコンセプトアルバム。ジギーは、スパイダーズを率いる異星から来たロックスターで、アルバムを通して彼の盛衰の物語が描かれている。「月世界の白昼夢」と訳されたこの曲は、ジギーがスターダムへと昇るカリスマ性を発揮する歌だ。デヴィッドはライブでもジギーを演じ、宇宙人を思わせるメイクとコスチュームで登場。大きなセットと、芸術的なステージ演出で観客を熱狂させた。現在のライブ演出の原点となっている。リリース当時の邦題は「屈折する星くずの上昇と下降、そして火星からきた蜘蛛の群れ」と、まるで固有名詞まで直訳するエキサイト先生が訳したような大惨事となっており、難解なアルバムコンセプトに、当時の日本のレコード会社の混乱っぷりが手に取るようにわかるタイトルとなっている。現在は改題され単に「ジギー・スターダスト」となった。
劇中、ノーウェアに向かうミラノ号船内で流れる。5人のメンバーが揃った瞬間である。この曲はリーダーとして、スターロードのカリスマ性を…現して…いや、それはまだないな(笑)「月世界の白昼夢で騒ごうぜ」ってあたりの歌詞がリンクしている(?こじつけたw)
3.Spirit in the Sky (1969)
Noman Greenbaum
この曲は70年代を代表する曲の一つで、『アポロ13』や『タイタンズを忘れない』『サンシャイン・クリーニング』『ウェインズ・ワールド2』など、数多くの映画でも使われている。エルトン・ジョンをはじめ、カバーも多く70年代を代表とする曲となっている。
5.Fooled Around and Fell in Love (1976)
Elvin Bishop
ピーターがガモーラに、ウォークマンを聴かせる時に流れるこの曲は、エルヴィン・ビショップの1976年のアルバムに収録されている。「たくさんの女の子と付き合って、ずっとフラフラしてたけど、君に出会って本物の恋に落ちた」と言う、誰にでも言ってそうな言葉が出てくる歌詞だ。この曲は大ヒットし、ディスコのチークタイムの代表曲となった。劇中でも、接近した二人が、踊るの踊らないのとやっているが、まさに当時のディスコで見かけそうな風景だ。
この曲も多くの映画でも使われており、『ブギー・ナイツ2』や『サマー・オブ・サム』などでも流れた。
9.Cherry Bomb (1977)
The Runaways
コルセットとガーターベルトという、過激な下着姿で歌う16歳でデビューした女性ロックバンド。アメリカ本国では売れなかったが、彼女らはなぜか日本でヒットし、ボーカルのシェリーを篠山紀信が「激写」した事でも話題になった。現在では、パンクロックの先駆者としてアメリカでも再評価が高まるバンドである。
大人に対する少女の反抗心を過激に歌ったこの曲は当時日本で「悩殺爆弾」の名前でリリースされたが、その後改題され「チェリー・ボンブ」となった。ボンブ!って時代感あっていいねw
2010年にランナウェイズの伝記映画『ランナウェイズ』が製作され、翌年日本でも公開されたが、3月12日公開という事で、タイミング悪くて余り話題にはならなかった。シェリーをダゴタ・ファニングが演じており、体当たりの演技を見せてくれる。(つまりコルセットにガーターベルトのけしからん姿が見られる!)ある意味、いとこのカワイイ優等生のお嬢ちゃんが、不良娘になって帰って来たような感覚を味わえる作品だ。
劇中では、オーブ奪還に向け結束を固め、ヨンドゥたちを味方に付けるシーンで流れた。余りに強大な力を持ったロナンに対する対抗に「サクランボ爆弾」じゃ、チョット頼りないけど、果たしてその威力はいかに?
11.O-o-h Child (1970)
Five Stair steps
ファイブ・ステアーステップスは、結成当時は5人の黒人兄弟で、順番に並んだ姿が階段みたいだと言った、母親の言葉に因んだバンド名。後に増えたり減ったりして、5人ではなかったりした。ジャクソン5よりも先にデビューしており、キッズグループの先駆けとなった。
映画でも『サンキュー・ボーイズ』『ボーイズン・ザ・フッド』などでも聴く事ができる。
この曲は、不安な世の中でも、「世界はきっと楽しくなるよ、明日はきっと良くなるよ」と、母親が子供に優しく語りかける温かみのある歌だ。
ザンダー星に墜落したダークアスターと共に、大破したミラノ号のカセットデッキから流れるのがこの曲だ。万事休すの絶望的な場面で、未来への希望がとても切なく流れる。そしてまさかの決戦は、ダンスバトル!
12.Ain't No Mountain High Enough (1967)
Marvin Gaye & Tammi Terrell
ラストシーンで、母からのメッセージとして流れるのがこの曲だ。
不遇の歌姫タミー・テレルとマーヴィン・ゲイのデュオである。
この曲は、まず、この二人の話をせねばなるまい。イジメやレイプなど、不遇の少女時代を送ったタミーは、卓越した歌唱力とその美貌から歌手として注目された。恋人から暴行を受けるという辛い経験も乗り越えて、モータウンで人気上昇中のマーヴィン・ゲイと出会う。二人のデュオはたちまち人気になり、大ヒットとなった。二人にはそれぞれ恋人がいたが、二人はとても親密な間柄に発展していった。人気の絶頂期のあるライブで、彼女の脳腫瘍が悪化し、ステージ上でマーヴィンの腕に倒れ込んだ。その後、腫瘍の摘出手術を7回繰り返すが、その合間にもレコーディングは続けていたという。1970年3月16日、8回目の手術で遂に帰らぬ人となった。24歳という若さであった。
マーヴィンはショックの為、活動を一時中止、酒とドラッグに溺れた。悲しみを乗り越え再起動した彼は、アルバム“What's Going On”を発表。当時としては画期的なセルフプロデュースで、彼の戦争や公害などに対する思いをテーマにした、作家性の高い作品は、多くのミュージシャンに影響を与えた。金使いが荒くドラッグに溺れ、結婚離婚を繰り返し、遂には破産したりと、私生活は混乱を極めた。それでも1982年には復活し“Sexual Healing”は翌年のグラミー賞を受賞した。彼が45歳の誕生日を迎える前日の1984年4月1日、自宅で口論となった父親に射殺され他界。余りに呆気ない最期は、世界中に衝撃を与えた。今でも、最も影響力のあるミュージシャンとして数えられる一人である。
「どんなに遠く離れても、君が僕を呼んだら、どんな時でも直ぐに会いに行くよ。君との間に、高すぎる山も低過ぎる谷もないのだから」と、この曲は歌う。恋人同士の歌ではあるが、この映画のラストで流れると、ガーディアンたちのヒロイックな象徴に聴こえてくるから不思議だ。ピーターの選んだ道が正しい事だったと天国の母親が讃えているようにも聞こえる。
マーヴィンとタミーは、多くの曲が別々のマイクでレコーディングされているが、この曲だけは1本のマイクで同時収録されている。二人の息のあった掛け合いが伝わるナンバーだ。
他界したタミーを惜しんでダイアナ・ロスがカバーしたのも有名だ。彼女にとってシュープリームスから独立後、初の全米No.1ヒットとなった。語りかけるようなアレンジは、彼女のライブではラストを飾るのに欠かせない曲となっている。
Diana Ross - Ain't No Mountain High Enough [1978]
また、この曲も多くの映画で使われており『タイタンズを忘れない』『グッド・ナイトムーン』などでも流れた。また『天使にラブソングを2』では、エンドロールにゴスペルアレンジ版をウーピー・ゴールドバーグたちが熱唱しているのも印象深い。
Ain't no Mountain High from the "Sister Act 2"
7.I Want You Back(1969)
The Jackson5
エンディングで流れるのは、言わずと知れたマイケル・ジャクソンの、少年時代の声がカワイイこの曲だ。ジャクソン5も兄弟で結成されたファミリーバンドで、このデビュー曲を皮切りにブレイクし、“ABC”や“I'll be There”など、No.1ヒットを連発した。「僕の元から去って行った君とやり直したい。どうか帰って来て欲しいの」と歌うこの曲に「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーは帰ってくる」とテロップが入るのは、ジョークが効いていていい。
映画『Dearフレンズ』『ドラムライン』などでも使われていた。
以上、12曲を主観も含めて解説してみた。おさらいとして、もう一度、登場曲に並べ替えてみよう。
6-8-2-1-10-4-(3)-5-9-11-12-7
この曲順に再生すれば、登場曲順になるのでプログラム再生や、プレイリストの参考にして頂きたい。最近のハリウッドは、70〜80年代を題材にした映画が多くて、まだまだ埋もれた名曲たちを発掘してくれるんじゃないかと期待してるけど「あの頃は良かった」と暗黒の70年代を懐かしんでいる今のアメリカが、そこまで病んでるって事で、ちょっと複雑な気分。でも、確かに芸術が元気だった時代でもある訳で、その辺りでアメリカも元気になってくれたら良いと、ハリウッドは応援しているんだよね。元気がもらえる映画でした!ありがとうマーベルさん!
続編出来たらオイラも。高すぎる山も深すぎる谷も超えて、必ず劇場に帰ってきますよん(`_´)ゞ
追記:レコードジャケットやリンクは、オリジナルアルバムやシングルなどを優先的に選んだが、入手できなかったものはベスト盤なども掲載した。Amazonのリンクは、同アーティストのほかの曲の試聴などに活用してみて欲しい。